田島隆雄の覚え書き

『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式 』(幻冬舎)←クリックするとamazonの販売ページに行けます。

まだ20世紀だった頃の話です。
ペンネームで初めての著書を出すことになった私は、編集者さんから印税は8%だと告げられました。
「ええっ! 印税は10%じゃないんですか?」
 「弊社の規定は8%です」

印税10%は都市伝説、いや10%の場合もあるのですが、基本的に印税契約というものは、出版社と著作者との間で結ばれる二者間契約なので、 数字は両者の合意によっていくらでも変わるのです。
著者が二人なら5%ずつとか、翻訳者に3%とか、原作者に4%とか、いろいろです。

その後、出版業界で仕事をしていて、さまざまな話を見聞しました。
聞いた話では11%の契約もありましたし、7%の契約もありました。
そして、印税が支払われない契約も、けっこうあることを知ったのです。

そもそも。
出版社のオファーとは「おたくの原稿で本をつくらせてください」というものです。
それに対しての代価をいくらにするかは、いろんな考え方があります。
印税契約とは、売れた割合に応じて、報酬が変化するという、合理的な考え方です。

しかし、その割合が10%が適切であるかどうかは、特に証明されてはいません。
本が売れている頃なら10%でも良かったけど、本が売れない時代は12%くらいなければ苦しいという考え方もあります。
定価が5000円の本なら5%でもいいけど、500円の本なら15%欲しいという考え方もあるでしょう。
考え出せば、いろいろと面倒くさいわけです。

実は、売れてる人はそんなことを考えなくてすみます。
売れれば売れるほど、いくらでも印税が入ってくるからです。
しかし、そうでない人の場合、たとえば私のように、印税が1%あがれば、なんてことを考えてしまうわけです。
夢のない話ですね。
まあ、作家ではなくフリーライターの話なので、許されるでしょう。

で、話は変わりますが、会社をたちあげた知人に、社員の給料をどうやって決めているかの話を聞いたことがあります。
彼の答えは「相場も気にしつつ、生活に困らない程度の金額を支払う」でした。
これは、どんなに会社が赤字でも、社員の生活を保障するという意味でもあります。

出版社の中には、同じような考え方をする人もいます。
たとえば、定価500円の本が印税10%で1万部売れても50万円です。だったら、最初から印税契約ではなく、100万円で出版の権利を買い取る契約の方が、ライターの生活も安定するのではないかと。
この場合、売れても売れなくても、ライターには100万円入ります。
このような、印税ではない契約も、意外と多かったりします。
ただし、この場合はその本がどれだけ売れても、ライターには追加の収入はなくなります。
なので、買い取り契約を好む人は少ないようです。

そのほか、実売部数での印税契約というものもあります。
基本的に、出版社が買うのは出版の権利なので、印刷部数に対して印税が支払われます。
1万部刷ったら、たとえ1000部しか売れなくても、1万部の印税が支払われるわけです。
それは、商品化を考える出版社が負うリスクだと考えられていました。
しかし、冒頭に述べたように、契約は二者間契約ですから、両者の合意があれば何とでも変えられます。
「うちの経営が苦しいので、実売契約でお願いします」という出版社もあるわけです。
 とはいえ、出版社としては、作家さんの生活も気になりますから、「初版は印刷部数で、増刷したら実売部数で印税を支払います」というところもあります。
出版社が零細で経営難の場合、利益の分配を考えるのは、より難しくなります。

とある出版社は、大学教授の研究を本にしているのですが、印税契約を結ばないそうです。大学の先生は大学から生計を得ていて、それでも研究成果を本にして出せるのはありがたいと考えるから、成り立っているのでしょう。専門書は広く売れるものでもないので、もともと印税契約には馴染まないのです。

WEB小説がすぐれているのは、出版社に認められなくても、インターネットで無料で作品を全国公開できることです。お金にとらわれず、人間関係のしがらみにもとらわれず、純粋に作品を読んでもらえるアマチュアの楽しさには、もっと光が当てられても良いと思います。
 
逆にプロはプロで、鈴木みそ先生とか、佐藤秀峰先生とか、電子書籍を自分で売って成功している方もいて、インターネットはいろんな可能性を広げてくれるのですが、作家さんは作品を書きたいわけであって、売りたいわけではないので、万人にすすめられる方法ではないのです。

 『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式』、発売中です。
 インタビューした作家さん10人のWEB小説が読める「小説家になろう」マイページへのリンクを用意しました。

もり『悪役令嬢、時々本気、のち聖女』 

柗本保羽『銀河連合日本』

日向夏『薬屋のひとりごと』 

坂東太郎『10年ごしの引きニートを辞めて外出したら』

はなぶさ『これはきっと、恋じゃない』

蝉川夏哉『異世界居酒屋「のぶ」』

住野よる『君の膵臓をたべたい』(現在、WEB上で読むことはできません)

シムCM『加賀100万石に仕えることになった』

小択出新都『わたしはふたつめの人生をあるく!』

Aska『スタイリッシュざまぁ』

 なお、書籍版とWEB版とで内容が違うことがあります。
 また、作者及び出版社の判断で、WEB小説としての公開を止めることもあります。
 ご了承ください。
  書籍化情報もまとめておきます(リンク先はamazonですが、アフィリエイト広告はありません)。

もり『悪役令嬢、時々本気、のち聖女』 (主婦と生活社)

柗本保羽『銀河連合日本』(星海社)

日向夏『薬屋のひとりごと』 (主婦の友社)

坂東太郎『10年ごしの引きニートを辞めて外出したら』(オーバーラップ)

はなぶさ『これはきっと、恋じゃない』(KADOKAWA/エンターブレイン)

蝉川夏哉『異世界居酒屋「のぶ」』(宝島社)

住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉社)

シムCM『加賀100万石に仕えることになった』(KADOKAWA/角川書店)

小択出新都『わたしはふたつめの人生をあるく!』(アース・スター)

Aska『スタイリッシュざまぁ』(宝島社)書籍化予定

 いろいろな出版社さんがありますね。
 ちなみに、KADOKAWAグループは、スニーカー文庫の角川書店だけでなく、電撃文庫のアスキー・メディアワークスとか、MF文庫のメディアファクトリーとか、ファンタジア文庫の富士見書房とか、ファミ通文庫のエンターブレインとか、ビジネス書の中経出版とかを、M&Aで吸収合併してすべて抱える、一大グループです。
 出版業界のソフトバンクですね。

 なお、本ページの掲載順は書籍掲載順の逆になっています。
 書籍の掲載順は、インタビューの内容に合わせて調整しました。
 はなぶささんと、Askaさんは、出版が間に合わなかったので、本に書影(表紙)を掲載できなくて残念です。

聞いた話ですが、本屋に行く人の8~9割は、買う本を決めていないそうです。
ですから、本屋でどれだけ目立つかが、本が売れるかどうかの岐路になります。
そこで、表紙が重要になります。

表紙の必須要素は、タイトルと著者名で、後の余白が編集者の腕の見せ所です。
通常、ライトノベルの多くは、美麗なイラストで勝負します。 

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タイトルはイラストに次いで重要な要素です。
WEB小説によくある長いタイトルの場合、一部の文字が小さくされたり、副題に回されたりする可能性があります。
タイトルが長すぎると、一息に読めなくて、目立たなくなるからです。

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文字の大きさでいえば、通常は、タイトルのほうを著者名よりも大きくします。
しかし、作家が有名な場合は、著者名のほうをタイトルよりも大きくすることがあります。
ええ、もう、イラストなんかいらないほどに。

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逆に、著者が無名で販促に役立たない場合、著者名は小さく表示されます。

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 ご年配の方にWEB小説の話をしようとすると、電子書籍と間違えられることがあるのですが、ええと、その2つはたぶん違うものです。

 WEB小説というのは、インターネット上で、たいていは無料公開されている小説のことです。

 電子書籍は、インターネットを通じて入手することも多いのですが、ネットとは無関係に読むことができて、たいていは商業出版された紙の書籍を電子化(ペーパーレス化)したものです。つまり有料です。

 もちろん、電子書籍の中には無料のものもあって、中にはWEB小説を電子書籍化したものもあるので、だんだんと違いがわからなくなってくるのですが、基本的にオンラインでウェブブラウザを使って読むものがWEB小説で、オフラインでアプリやリーダーを使って読むものが電子書籍です。

 わかりにくいですね。
 わかりにくさの理由の一つは、電子書籍の閲覧フォーマットが、ウェブとは切り離されて独立して存在しているからです。
 で、それには理由があって、かつて通信費用が定額制でなかった時代、ケータイでいつでもどこでもウェブを楽しむことができなかった時代には、コンテンツはダウンロードしてローカル端末に保存してから楽しむものだったからです。
 ウェブブラウザと電子書籍リーダーが、別のアプリとして設計されているのは、そんな時代の名残りです。

 現在では、ウェブブラウザで電子書籍を購入してそのまま読める形式も登場していますが、多くは切り離されたかたちで存在しています。
 それにはメリットもあります。
 現在でも、通信の電波が届かない地域はいくらでもありますから、ウェブに接続してない状況でも使える電子書籍は有意義なのです。

 ネット常時接続が本当に当たり前になれば、WEB小説と電子書籍に違いはなくなるのでしょうか。

 

出版業界はいろいろと特殊だと言われています。

たとえば、新刊本の価格は日本全国どこで買っても同じです。
書籍・雑誌・新聞・音楽ソフトには、再販制度(再販売価格維持制度) があって、定価でしか販売できないからです。

そんなの当たり前じゃないかと思うかもしれませんが、たとえばイギリスやアメリカでは、そうなっていません。
本やCDは小売店が価格を自由に設定できるので、小売店同士の差別化も起きますし、競争もあります。
アメリカから来たアマゾンが、本の購入にポイントをつけたり、輸入CDを安く売ったり、再販制度の対象になっていないDVD付きCDを値引きして売ったりするのは、小売業者としては当然の営業努力なわけです。

再販制度があるので、日本の書店、新聞販売店は価格競争ができません。
そのおかげで、中小の書店や出版社やあまり売れない作家さんが助かっているとも言えます。
価格競争が激しくなると、そうした人たちは淘汰されてしまうかもしれません。

一方で、新刊本の価格が高すぎると読者が感じると、ブックオフに代表される中古本の市場が栄えて、やはり新刊本の売上が落ちてしまいます。
で、中古本市場がいくら栄えても、新刊書店や出版社や作家さんにはお金が入ってこないので、新古書店は、一時、業界の一部からずいぶん敵視されていました。

同じ理由で、図書館に対する風当たりも強いです。
図書館で新刊本が手軽に読めてしまうと、本が売れなくなるではないかという理屈です。
売れてる作家さんにしてみれば、そうなんです。
でも、そんなに売れない学術書とかマイナーなテーマの本は、初版部数2000部とか3000部とかなので、日本全国に3200ある公共図書館に一部ずつ買ってもらえば増刷できるというジョークもあります(いま考えた)。
大学図書館も含めれば、5000部行けます。

再販制度についてはいろいろな議論が繰り返されてきているので、ここではその是非はおきます。

個人的な意見を言うなら、再販制度も新古書店も図書館もすべて、あって良いと思います。
問題は、作家さんが「苦労の割に金銭的な報いが少ない」と感じてしまうことにあるのではないでしょうか。
それを解決するために、他者や制度を批判するよりも、もっと生産的な方法があるのではないかと考えています。

出版業界にはもう一つ、委託販売制度という特殊な制度があるのですが、その話はまた今度。

 島田潤一郎さんの『あしたから出版社』(晶文社、2014)は、出版社の中の人が、何を考えているのかを知る一助になる本です。
 といっても、島田さんの働く出版社・夏葉社は、普通の出版社とは違います。
  夏葉社は、ひとり出版社で、島田さんは経営も編集も営業も経理も、すべての仕事をひとりでこなしているからです。

 けれど、この本は、出版社経営のノウハウ本ではありません。
 27歳まで作家志望で、小説を書きながらフリーターを続けてきた島田さんの自叙伝であり、一人の青年の生き方についての本です。
 本は、31歳無職の島田さんが、転職活動で50社に落ちるところから始まります。
 そこで一つの事件が起きて、島田さんは次のように考えます。

 三一歳までのぼくは自分のためだけに生きてきた。いかに自分を磨き、成長し、立派な大人になるか。そんなことばかりを熱心に考えてきた。働くことも成長するための手段だと思っていたし、一所懸命本を読んできたのも、平たくいってしまえば、自分自身をほかのだれよりも輝かせたいがためであった。
 こたえなどわからなかったが、とりあえず、もう十分だ、と思った。ぼくは十分自分のために尽くした、と思った。

 そこから何をやるかは人それぞれですが、島田さんが選んだのが、とある本を出すことでした。
 なぜ、そうなるのかは、ここでは詳述しませんが、一言で言えば、島田さんが本の力を信じていたからでしょう。
 そして、本を好きな島田さんの回りには、本を好きな人が集まってくるようになります。
 その人たちの力を借りて、島田さんの出版社は、ずんぐりと動きはじめます。

 小説を好きな島田さんが、小説を書いていたとき、島田さんの周りには小説を好きな人が集まってくるわけではありませんでした。
 それは、島田さんが一人で小説を書いていて、一人で完成させようとしていたからです。
 書店に流通させる本は、一人ではつくれません。作者はもちろん、編集者、イラストレーター、装幀デザイナー、印刷会社、取次会社、本屋と書店員、さらに買ってくれる読者が必要です。
 それは、良い意味でのビジネスです。

 この本は、島田さんの成長を描いた、成長物語として読むこともできます。
 小説を書くことが自己中心的で、出版社ビジネスが社会的な行為だと言いたいわけではありません。
 小説を書くことで人とつながる人もおおぜいいれば、会社を起こして失敗する人もおおぜいいます。
 たまたま、島田さんの場合はそうだったというだけです。

 そもそも、島田さんはいくつかの会社で真面目に働いて、辞めてしまったのですから、社会に出ることが、すなわち、つながりを築くことにはなりません。
 出版社を立ち上げてからも、資金がなくなって、再び借金という事態にもなっています。

 では、何が島田さんの転職活動を終わらせることになったのか。
 ビジネス書の通説で言えば「試行錯誤」を重ねた末の「幸運」ですが、物語的には「情熱」と考えたいところです。
 

 

私の本のタイトルは『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式』となっています。
ところで、ここで使われている「WEB小説」という用語は、実はまだデファクト・スタンダード(業界標準)になっていないような気がします。

紙ではなく、インターネット上で発表される小説を、「WEB小説」と呼んでいいんでしょうか?

たとえば、旧なろうコン(「小説家になろう」コンテスト)は、現在、「ネット小説」大賞という名前になっています。
「ネット小説」という言葉はよく聞きますね。
「オンライン小説」という言葉もあります。
「インターネット小説」は、あまり使われているところを見たことがありません。

同じ「WEB小説」でも、表記が「WEB小説」、「Web小説」、「web小説」、「ウェブ小説」と揺れているところがあります。
ちなみに、小説投稿サイト「カクヨム」は、Web小説の表記で、「小説家になろう」は単に「小説」と記しています。

その他、本屋で調べると、それぞれこんなタイトルの本がありますね。

『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式』
『このWeb小説がすごい!』
書籍になったweb小説・ケータイ小説3000冊』 
『ウェブ小説の衝撃』

いまだ確定した用語がないのは、WEB小節についての言説が少なすぎるからかもしれません。

 出版社はビジネスを行っているという観点からみれば、作家さんと出版社との関係はビジネスパートナーです。

 簡単に言えば、コンテンツを作るのが作家さんで、そのコンテンツを本にして売るのが出版社です。

 ですから、印刷所からできあがったばかりの本は、作家さんの所有物ではなく、出版社の所有物になります。紙の代金も、印刷の代金も、保管のための倉庫代も、出版社が出しているからです。コンテンツ(著作権)自体は作家さんのものですが、本にすると、個々の本はそれを買った人のものになるわけです。

 もっと言えば、物体としての本にするときの、タイトルとか、帯のコピーとか、装幀とか、広告とか、売り出し方とかも、もちろん作家さんの意見も聞きますが、最終的には出版社が決定権を持っています。物体としての本をつくって、売るビジネスをしているのが出版社だからです。

 では、作家さんはどのようなビジネスをしているのかといえば、「コンテンツを本にして販売する権利」(出版権)を、出版社に売っています。

 ですから、有川浩さんの『三匹のおっさん』って、最初は文藝春秋社から出ていたのに、途中から新潮社に変わって、今は講談社から出ているよねってことも起こります。

 雷句誠さんの『金色のガッシュ!』って、コミックスは小学館から出ていたのに、文庫版と電子書籍版は講談社から出ているよね、ってことも起こります。

 どちらも、コンテンツの出版権の契約が変更になったからでしょう。
 ビジネスなので、そういうことはありえます。

 作家なので、ビジネスのことは出版社に任せたい、という人もいますが、作家だって出版社との間でビジネスを行っています。

 たとえば、コンテンツを頒布するビジネスも自分でやることにすると宣言して、出版社から距離をおいてしまったのが『ブラックジャックによろしく』の佐藤秀峰さんです。

 別に、出版社と駆け引きをしろという話ではありません。
 出版社が、何を求めているのか、理解しておいた方がよいというお話です。

 編集さんの中には、作家さんの代理人のように、味方になってサポートしてくれる人も少なくありません。出版社との間にたって、尽力してくれる人もいます。
 映画『バクマン。』でも、主人公二人の担当編集者が「会社と君たちが対立したら、ぼくは君たちの側につく」と力強く宣言する場面があります。

 そうであっても、社員である限り、会社の意向にさからい続けるのは難しいことです。たとえフリーランスでも、その出版社と仕事を続けたいのであれば、喧嘩ばかりもできません。
 海外では、出版社との交渉を行う、作家のエージェントという職種もあるのですが、日本ではまだ、まれです。

 作家さんは無用なトラブルを避けるために、商業出版はビジネスであることを、どこかで意識しておいたほうが良いと思うのです。

 現在、たいていのWEB小説は無料で見ることができます。
 作者が、その対価を要求することなく、無料で公開してくれるからです。

 なぜ、無料で公開するかには人それぞれの理由があるのでしょうが、主なものは次の2つです。

①無料公開によって多くの人が見てくれること、反応をもらえることが対価になっている。 

②最初は無料で提供してファンをつくり、後にさまざまな手段で対価を回収するフリーミアムモデルになっている。

 ①は金銭を目的としていないもので、②は金銭は後からついてくると考えるものです。基本は①だけど、うまくいけば②という考え方もあります。

 で、②の中にもいろんなタイプがあります。

 最も一般的なタイプは、出版社などに見い出されて、あるいは応募して、商業化してもらうことです。これはマネタイズの方法を出版社にゆだねることになりますが、全部お任せにできるので面倒がありません。

 人気があっても、出版社から声がかからない場合、自力でマネタイズすることもできます。
 ウェブサイトをつくっている知人は、アクセス数が多ければ、広告やアフィリエイトで一定の収入が得られると話していました。もちろん、人気が十分にあることが前提です。
 あるいは、本編は無料公開で、番外編や設定資料集を販売することも可能です。カリスマ的な人気があるのであればいっそのこと、ファンクラブをつくって会報を発行し、会費をいただけばいいのかもしれません。
 しばしば、一部の同人作家の売り上げのすごさが話題になることもあります。

 とあるイギリスのインディー・ミュージシャンが、未発表曲集を自宅でライブ録音して、50回のテイクを、それぞれ一枚限りの限定作品としてナンバリングし、1万円の値段をつけてウェブサイトで販売したところ、あっという間に売り切れました。世界に1枚だけの音源が50部限定ですから、ファンにとっては、値段にはかえられない価値があります。

 マネタイズとは、ビジネスですから、どんな方法であれば、お客様が喜んでお金を使ってくれるのかを考えることになります。
 大事なことなので繰り返しますが、ビジネスとは、お客様にお金を使わせるのではなく、お客様を喜ばせることが第一義になります。

 とはいえ、ビジネスはビジネスで手間がかかります。
 小説を書くことが得意な人が、必ずしもビジネスに長けているわけでもないので、出版社というプロのエージェント(代理人)が、マネタイズを代替しています。
 作家さんは、書きたいのであって、売りたいわけではないからです。(でも、売りたいわけではないけれども、読んでほしいという人は多く、それがWEB小説が無料で提供される理由です)。

 それに自分でやるよりも、出版社に任せた方が、より効率的で、面倒がないのはたしかです。
 なにしろ、出版社には紙の書籍の流通システムと販売ノウハウがあります。また、作家さんをさまざまな面でサポートしてくれる存在でもあります。

 なお、出版社を、ビジネスという視点で見ることを好まない人もいますが、ビジネスの側面に目をつぶると、逆に、その全体像が見えにくくなります。

 もちろん、出版には文化事業という側面がありますし、その志をもって働いている人もおおぜいいます。個々の編集さんは特にそうです。
 しかし、出版社という会社の経営に携わる人にビジネスの意識がなかったら、早晩、会社はつぶれて、社員が路頭に迷ってしまいます。

 また、仮に出版社が、「出版は文化事業だから、作家さんも無報酬で協力してください」なんて言ったら、 たいていの作家さんは怒ります。
 ですから、適切なビジネス意識は、ないよりはあったほうがよいと思います。

 といっても、あまり短絡的なビジネスに寄りすぎると「売れないから打ち切りにします」で、作家さんも育たないし、業界も縮小していきますから、それはそれで問題です。

 迂遠な話になりました。
 大きな出版社はある程度まとまったビジネスにしか興味を示さないけど、そこから漏れても、個人で創作の足しになる程度の収入を得られそうな作家さんはいるのではないか、というお話です。
 

 そもそも日本には、小説を書くことだけで生活している専業作家というものは、日本では江戸時代まで存在していませんでした(たぶん)。

 それは、小説を売ってお金に換えるシステムがなかったからです。

 清少納言も紫式部も、吉田兼好も鴨長明も、自分の書いたものを他人が読むことでは、収入を得ていなかったと思います(見てきたわけではありません)。

 ですから、小説というものは、長い間、純粋に楽しみとして書くものだったわけです。

 いま、資料が手元に見つからないので、うろ覚えで書きますが(間違っていたら、ご指摘ください)、紙の本というのもができた当初、つまり江戸時代の出版社は、作者にお金を払うことにあまり熱心でなかったと聞いたことがあります。

 「あなたの大切な作品を本にして、多くの人が読めるようにしてあげますよ。代金はこちらでもちます。その代わり、当たったら私に儲けさせてくださいね。これは、お互いにメリットのある取引ですよね」というのが、リスクをおかして本を出版する、江戸時代の出版社の提案営業だったのでしょう。

 作者が趣味として書いていて、その望みが「多くの人に読んでもらいたい」だった時代には、それでお互いに幸せだったわけです。

 これに対して、生活ができる程度の原稿料を主張して出版社と交渉し、日本初の専業作家になったと言われるのが、『東海道中膝栗毛』の十返舎一九だと言われています。
 この偉大な先達のおかげで、小説を書くという「趣味」が「仕事」になったわけです。
 
 さて、時代は下って、識字率が上がって、ベストセラーが生まれるようになると、一部の作品では、印税が大きな収入をもたらすようになります。
 経済学の原理でいえば、お金の集まるところには、多くの才能が集まるようになります。そこで、作家=印税生活=悠々自適というイメージも生まれました。

 そんなことはないよ、というのは、本に書いたとおりですし、出版不況の中で、その事実もだいぶ世の中に知れ渡ってきました。
 そして、WEB小説という場に、再び、専業ではなく、純粋な楽しみとして小説を書く人々が増えているのは、ある意味では健全なことだなあとも思うのです。

 一方で、頭と時間を使って創作をしている方たちに、何らかのマネタイズの手段があればよいとも思います。インターネットは無料が正義で、WEB小説は無料で読めることに大きな価値があるのですが、需要が高くて専業作家になった方に、ただ働きはさせられません。

 現在のところ、紙の書籍化がほぼ唯一の現金化手段に見えるのですが、書籍は書籍で、市場の縮小に悩まされています。

  

 シムCMさんは30代のシステムエンジニアだそうです。
 そして、小説書きを専業にするつもりはなく、兼業作家として活動しています。

 インタビューから引用してみます。

 今回、書籍化したことで、まとまった金額が入ってはきたのですけれども、30代で正社員として仕事している人から見れば、年収のほうが明らかに多いので、これで生きていこうと思ったら、ちょっと足りないなって(笑)。
 もちろん、副業として考えれば十分な額ではありますし、今の仕事をやりつつ、趣味として書き続けていくのであれば、確かにありだなとは思うのですけれど。これを本業にしようと思ったら、少し大変な人生を歩むことになるとは思いますね。

 これは、ある意味、まっとうな感覚かもしれないと思いました。

 あるいは、『加賀100万石に仕えることになった』 の主人公のように、自分の能力の範囲内で、きちんと計算をして生きていく強さと賢さかもしれません。

 シムCMさんは、明るく快活な受け答えをする方でした。
 出版業界でフリーランスという浮き草稼業の身の上から見ると、やや眩しく感じてしまうほどでした。
 

 身分証明書で確認したわけではありませんが、Askaさんは、今回インタビューした10人の作家さんの中で、おそらく最も若い方です。そして、いちばん新世代(ニュー・ジェネレーション)を感じさせる方でした。

 あ、Askaさんといっても、SAY YESとかYAH YAH YAHとかCHAGEさんとは、まったく関係ないですよ。というか、たぶんそちらのASKAさんのことは知らずにペンネームをつけたふしもあります(聞きそびれました)。

 Askaさんにあるのは、創作(小説を書く)という行為が、セーターを編むとか、模型を作るとか、趣味として生活の一部になっている感。もちろん、それは他の方にもあったものですが、とても自然に身についていました。

 インタビューからの引用です。
仕事柄、専門書を読むことは多いのですが、小説はあまり読まなかったです。漫画は普通に買いますけど、小説を買うことは少なかったと思います。小説も好きですけど、すごくはまったというほどではありませんでした。
 WEB小説の可能性を強く感じたのは、Askaさんのインタビューを通してでした。

 そんなAskaさんは、インタビュー当時は、作品の書籍化が決まっていなかったのですが、その後、ネット小説大賞(なろうコン)を受賞して、作品の出版も視野に入ってきました。

 書籍化なんてほとんど考えていなかったようなAskaさんが、出版後どのような心境の変化があるのか、興味があります。

 『薬屋のひとりごと』の日向夏さんとは、時間と空間と次元の都合が合わずに、スカイプを利用しての電話インタビューになりました。

 実は、電話インタビューというものは、対面よりも緊張します。 
 通常、人は目(視覚)から多くの情報を受け取っているので、耳(聴覚)しか使えない状態だと、情報量が少なくて、判断に迷うのです。

 そんな手さぐり状態で始まったインタビューでしたが、日向夏さんの印象は…「クール」でした。
 猫猫(マオマオ)と話しているような気分になりました。

 本から引用してみましょう。
 (小説家になるには、まず)一本書きましょう。たぶん、すぐに結果がほしいとは思いますが、そんなにうまくいかないことは、私自身が身に染みて知っています。とりあえず、まず一本書きあげて、それを公開する。そして、誰かが見てくれるのを待ちましょう。運が悪いと、あまり多くの人に見てもらえないかもしれませんが、その時は気を取り直して次の作品を書きましょう。書き続けていれば、必ず、どこかの誰かの目に触れるはずです。

 クールです。
 もう少し、突っ込みたかったのですが、できませんでした。

 そんな日向さんの『薬屋のひとりごと』は、単行本文庫とコミック(予定)があるらしいので、ネットで購入の際はお間違えのないようお願いします。

 そのほか、最新情報は日向さんのツイッターからどうぞ。
 

 はなぶささんの小説は、繊細なガラス細工のような美しさがあります。

 時空を超えて、スカイプでしかお話しできなかったのですが、言葉の端々からもそれが伺えました。
 いろいろ気遣ってくださり、ありがとうございます。

 本からの引用です。
 ただ、私が書きたいものと、売れるものとは、また違うとも思っています。
 売れるものを書こうとすると、私の場合は、書いている意味がない。マイナーだけど面白い、といった形が理想です。
 そんな、はなぶささんですが、このたび『これはきっと、恋じゃない』が、カドカワBOOKSで書籍化されることになりました。

 書籍作成時には、まだ未発表だったので、そのことを掲載することができませんでした。
 なので、この場で告知させてください。
 発売日は8月10日で、現在amazonで予約受付中です。

 なお『これはきっと、恋じゃない』書籍化にあたって、本編はWEB小説としての公開を止めるようですので、読みたい方は7月中にはなぶささんの「小説家になろう」ページにアクセスしてください。

 

 『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式 』では、10人の作家さんにお話をうかがっています。

 で、基本的にこのようなインタビューは、全員に同じ時間をいただくものなんですが、今回、できあがった本を見ると、なぜか蝉川夏哉さんだけページが多くなっています。

 なぜかといえば、 蝉川夏哉さんが、まるでセミナーか講演のように、内容が濃い話をノンストップで続けてくださるので、単位時間当たりの原稿の文字数が多くなってしまったからです。。
 立て板に水を流すが如くの弁舌に、「天才だー!」(小学生並みの感想)と舌を巻きました。

  実際の原稿ではカットしたのですが、話の中にはこんなジョークもありました。

 よく小説家の方は「話下手」だと言われていますが、私もその例にもれず「無口」なもので(笑)。

  この部分をカットしたのは、原稿だけでは伝わらないと思ったからです。あの場で蝉川先生のトークを聞いていたときは噴き出したものですが。

 そんな蝉川先生のトークは、YouTubeで見ることもできます。私の印象ではこの3倍くらい速かったのですが……。

 

 なお、蝉川さんの『異世界居酒屋「のぶ」』は、単行本文庫コミックがありますので、お買い求めの際はお間違えのないようお願いいたします。その他の最新情報は、ツイッターからどうぞ。
 

 『10年ごしの引きニートを辞めて外出したら』坂東太郎さんは、インタビュー冒頭から衝撃的な話を聞かせてくれました。
(小説を書き始めた)きっかけは激務で心身を病んだことです。ある時車を運転していて、突然「死のう」と思ってハンドルを切ったんです。冬の北海道だったので、雪がクッションになって死なずに済みましたが、病院に行ったら鬱病だと言われて、会社を退職しました。それから関東の実家に帰ってきて、ニートとして暮らしていました。
 「こんな時、どういう顔をすればいいか、わからないの」でした。

 坂東さんが、ひょうひょうとした方だったので、つつがなくインタビューを続けることができましたが、あの小説の裏にそんな話があったなんて。

 人生の谷間に落ち込んだときに、小説を書くことで救われた という話には、胸を打たれました。
 インタビュー時点ではまだ出版されていなかったのですが、坂東さんの本、売れてほしいなあと強く思いました。

 その後、出版された『10年ごしの引きニートを辞めて外出したら』の最初の一巻を、坂東さんはわざわざ郵送で献本してくれました。

 表紙では、まったく屈託を感じさせない男女がこっちを向いてポーズを決めています。
 コメディですから、きっと、そんな重い話はいらないんですよね。

 いつか再会したら、サインを入れてもらおうと思っています。

 『わたしはふたつめの人生をあるく!』の小択出新都(おたくでにーと)さんも活動報告で紹介してくれました。ありがとうございます!
 活動報告から、引用します。
 たぶん私、話し方がえらそうなんですよね……。ちょっと自覚あります。
 上から目線だよねと言われます。文字起こしされてみると、あらためてその脅威に愕然としました。
 ぜんぜん、そんなことはないと思います。
 小択出新都さんとは、時間と場所の制約があったので、電話インタビューになったのですが、声だけでも、とても腰の低い優しそうな方だということが、ひしひしと伝わってきました。
 もし「えらそう」になってしまっているとするなら、それは私の責任だと思います。ごめんなさい。

 インタビューからの引用です。
 こんなごつい顔で言うと、気持ち悪いと思われるかもしれないですけど、恋愛ものを書いていたときに「キュンキュンしました」という感想をもらったときは「やった!」と思って、嬉しかったですね。後は、「キャラクターが好き」とか「かっこいい」とか、登場人物をほめられると嬉しいです。

 小択出新都さんとは、スカイプを利用しての遠隔インタビューになったのですが、通信の調子がおかしくて、途中で何度か切断されてしまって慌てたのも、今では良い思い出です(しみじみ)。

 『銀河連合日本』の柗本保羽(まつもとやすは)さんも、活動報告で『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式』の紹介をしてくれました。どうもありがとうございます。
実はですな、このインタビューのために、ヒナプロさんの本社まで車で出向いて、もう色々好き勝手ブチかましてきたんですけど、なんとですね、話がノリノリになって、3時間ほど記者さんやヒナプロさんスタッフ含めて爆笑モノで、しゃべり倒してまして、流石にそれの内容全部収録というわけにはいきませんけど、ままいろんな事、お話させていただいています。
 話、盛り上がりましたね。
 インタビュアーの私も、ついしゃべりすぎました。
 最後は、時間がなくなって、慌てて打ち切ったくらいです。
 ずっと笑いの絶えなかったあのインタビューの臨場感を、本では伝えきることができなくて残念です。
 実は、あの日の空気を再現したくて、原稿も関西弁バージョンで作っていたのですが、誰もが読みやすいようにということで、最終的に、標準語にすべて直すことになりました。
 残念です。 
 幻の関西弁バージョンを、ちょっとだけ掲載しておきます。本を買われた方は、ぜひ本文と比較して、柗本さんの言葉を脳内変換して楽しんでください。

 2月の15日に本が出たときは、今までの読者さんからツイッターへの反響がものすごかったですわ。ケータイのお知らせが一日中ピロリン、ピロリン鳴って、電池が一瞬でなくなってしまうくらいでした。ほんで3日くらい経ったら、星海社さんから電話かかってきて「重版決まりました」って。「一週間経たずに重版決まるのは、うちの会社では初めてです」って。なんか、売れているらしいですわ。

 

 ええと、インタビューさせていただいた作家さんたちが、ツイッターや活動報告で、『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式 』の紹介をしてくださっているようで、恐縮です。

 『悪役令嬢、時々本気、のち聖女。』のもりさんが、ブログ活動報告で、インタビュー当日の話を書いてくれました。

 そんな私ですので、緊張しまくり、何を話したのか覚えていないです。そのためか私がただ単に馬鹿なのか、質問に対しての答えがずれております。そのくせなんだか偉そうです。すみません。ごめんなさい。
 というわけで、まったく参考にならない私のインタビュー記事がちょっとだけ載ってしまったわけです。

 と書いてありますが、「ちょっとだけ」じゃなくて「たっぷり」載ってますし、とても参考になると思います。ほんとうです。
 あと、「答えがずれて」いるように見えるとしたら、私が編集で質問を短く詰めてしまったからですし、「偉そう」に見えるとしたら、それも私の編集がまずかったからだと思います。すみません。
 実際のもりさんは、目のぱっちりとした美人で、言葉遣いも性格の良さを感じさせる方でした。

 『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式 』から、もりさんの言葉をちょっと引用してみます。
 たとえば、出版社の方には「こんなに時間を割いてもらって申し訳ない」「本にするためにお金をかけてくださって申し訳ない」という気持ちがないまぜになっていました。
 それから、お金を出して購入していただいた読者の方には「お金を出す価値がありましたか?」「楽しんでいただけましたか?」という不安があります。
 もりさんらしいですよね。
 
 あと、なんだか私のこともほめてくださってありがとうございます。
 私の方こそ、そんな偉そうなものではないんですけど。この本、私は一応、著者としてクレジットされてますけど、どちらかといえば編者です。 作家さんたちがいたからこそ、できあがった本です。
 

 そういえば、『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式 』での、住野よるさんへのインタビューのとき、用意していったけれども、うっかり忘れて訊けなかった質問があるんです。
 せっかくだからここでお披露目しましょう。

 『君の膵臓をたべたい』95ページに、 「生きててよかったぁ!」って台詞があるのですが、これってフラワーカンパニーズの名曲「深夜高速」のオマージュですよね?


「生きててよかったぁ!」は1:09から。
動画はフラワーカンパニーズ Official YouTube Channelのものです。

 実際に確認はできなかったのですが、住野よるさんのツイッターには、しばしばフラワーカンパニーズの言及があるので、おそらくそうだろうと思っています。
 機会があれば、改めて訊いてみたいです。

 7月27日に、新しい本が出ます。
 アマゾンにはすでに販売ページが出来ているそうです。
 いま、編集さんから連絡をいただきました。
 どういう本かというのは、知っている方も多そうなのでここでは割愛します。知らない方は、アマゾンの内容紹介を見ていただければ。
 いい本だと思います。
 買っていただけたらすごく嬉しいです。
 よろしくお願いします。

 これまでいろいろ紙の本を書いてきましたが、ウェブ上で「買ってほしい」と言うのは、初めてです。
 良い本であれば、何も言わなくても売れるだろうと甘く考えていたところもあります。
 言わずもがなのことを言うのは、おしつけがましいのではないかと思っていた節もあります。
 正直なところ、今でもちょっと思います。
 では、なぜ、今回はあえて言うのかといえば、多くの人の気持ちにあてられたからです。

 本の中で10人のWEB小説作家さんにインタビューしています。
 みなさん、「小説が好き」という熱い思いをもっていました。共感しました。
 この方たちのことを、もっといろんな人に知ってもらいたいと思いました。
 それから、取材にあたってヒナプロジェクトの方たちにお世話になりました。
 ほかにも、たくさんの方がこの本のために仕事をしてくれました。
 みんなのために何かできないことはないかと考えて、これを書いてみました。
 役に立ったかどうか、自信はありません。

 気持ちというのは、たとえば。
 取材の中で、作家さんたちが「実際に本屋に並ぶまで書籍化が信じられなかった」と異口同音に仰いました。
 出版業界で長年働いていると、そういう初々しい感性を忘れがちになります。
 不安だなんて、目の覚めるような思いでした。
 そういえば、ぼくも最初はそうでした。
 「初心、忘るべからず」 ですね。

 ちなみに、このブログは発売前に書いています。
 たぶん、問題なく本屋に並ぶはずです。
 発売10日前というのは、おそらくもう印刷も終わって、実体としての本が、あらかたできあがっているはずだからです。
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